2024年11月20日(水)
田中 清純氏
【違いがあるから、地域は豊かになる──LGBTQから考える“誰もが暮らしやすいまち”】
LGBTQの理解促進というと、特別な啓発イベントや専門知識の学習を思い浮かべがちだ。しかし、地域にとって本当に必要なのは、「違い」を特別視せず、「あたりまえの暮らしの一部」として受け止める姿勢だ。誰もが、自分のままで安心して過ごせる地域づくりは、LGBTQだけの課題ではない。すべての人の“生きやすさ”とつながっている。
たとえば、肩書きや性別を問わず「ここにいていい」と感じられる居場所。カフェでも集会所でもいい。レインボーステッカーや柔らかな接客、プライバシーの尊重──そんな小さな工夫が、誰かにとっての“安心”になる。見える人にだけでなく、声を上げづらい人にも届く配慮が大切だ。
また、当事者の声を「聴く」ことも欠かせない。ただし、それは代表の意見に頼るのではなく、匿名や対話など多様な方法で、多様な声に耳を傾けること。聴いた声を制度やまちづくりに反映させることで、地域が少しずつ変わっていく実感が生まれる。
福祉や医療の現場でも、「ふつう」を見直す視点が求められている。同性パートナーを家族として扱う、呼び名を本人の希望に沿う、性別欄を自由記述にする──そんな実践が、尊厳を守るケアにつながる。そして何より、「知らないことを学び合える」文化が、現場を柔らかくしていく。
観光や地域ビジネスにおいても、LGBTQへの配慮はただの話題づくりではない。誰もが歓迎される場づくりは、地域のしなやかさと懐の深さを示す取り組みだ。外から押し付けられるのではなく、地域の人たちが「なぜこの未来を目指すのか」を共有しながら進めていくことが、本当の地域力を育てる。
違いを知ることから、地域の未来は始まる。完璧ではなくてもいい。小さな場づくりや対話の積み重ねから、「誰もがそのままでいられる場所」を、地域の中に増やしていきたい。