2024年10月16日(水)
HSP/HSCリンクパートナー
『Heart Smile Present』 梅本香理氏
【生きづらさのかけらから、社会を見つめなおす】
「生きづらさ」という言葉が、今や日常語になりつつある。学校に行けない子ども、職場に馴染めない大人、家から出られない高齢者――彼らはしばしば「生きづらい人」と呼ばれる。しかし本当に問題なのは「人」ではなく、「生きづらさを生む社会」ではないだろうか。
効率や成果が求められ、立ち止まることすら許されない社会の中で、ほんの少し疲れただけで置いていかれてしまう。そんな中で、声を上げられない人たちは、静かに、しかし確かに“生き延びる努力”を続けている。
「何もしていないように見える人」の中には、目に見えない闘いがある。罪悪感と共に日々を過ごしながら、それでも今日を生きている。それは「していない」のではなく、「見えない形でしている」だけだ。
だからこそ、何かをせずとも“居ていい”場所が必要だ。話さなくてもよくて、何も生産しなくていい、そんな“静かな居場所”が、再出発の力を育む。人はまず「ただいる」ことを許されてはじめて、次の一歩を選ぶことができるのだ。
他者との関係もまた、すべてを理解する必要はない。わからないままそばにいること。問い詰める代わりに共に黙ること。そんな“わからなさを抱えた関係性”が、人と人の間にやさしい空間を生む。
希望は、大きな夢や目標のことではない。「あの人の笑顔」「あの一言の救い」。そうした“かけら”のような光こそが、明日を迎える力になる。そしてその光を一緒に見つけてくれる存在が、何よりの支えとなる。
生きづらさのなかにいる人々は、社会の矛盾を感受できる人たちでもある。その語りに耳を傾け、見えない努力や希望のかけらをすくい上げること。それが、私たち一人ひとりができる「やさしい社会」の入口なのかもしれない。