つくり手として生きる──創造と共感の時代へ
かつて私たちは、「消費者」として生きることが豊かさの証でした。与えられたモノを買い、サービスを受けることで満足する時代です。しかし今、私たちは新しい地平に立っています。一人ひとりが課題の当事者として、自ら手を動かし、価値を生み出す「創造者」へと進化しようとしているのです。
失われた過去を「元に戻す」ことに固執するのではなく、新しい条件のもとでどんな価値を創り出せるかを問い直すとき、世界はまったく違った姿を見せます。人口減少や老朽化したインフラを「衰退」と見るのではなく、少人数でも幸福に暮らせる仕組みを設計するチャンスと捉えれば、未来は希望に満ちたものとなるはずです。
この時代の大きな転換点は、「市民と行政」の関係にも現れています。かつてのように「行政に任せる」のではなく、市民が自ら地域を動かし、行政はその舞台を整える「支援者」としての役割を担う。これが、共につくる「協働」の社会です。その主役は私たち一人ひとりなのです。
また、今の社会には、経済的価値では測れない「ありがとう」や「信頼」といった見えない価値が溢れています。それを可視化し、循環させる新たな経済の仕組み──たとえば「地域コイン」や「NFTによる貢献証明」などが、善意や共感のエネルギーを社会に温かくめぐらせています。お金で買えない価値が、人生と社会を豊かにしていく。そんな経済の再設計が始まっています。
そして、すべての基盤となるのが「テクノロジー」との関係性です。AIやロボットが進化する一方で、それに振り回されるのではなく、「なぜこの技術が必要か」「誰のためか」という人間中心の視点を手放してはいけません。ツールは、それを使う私たちの意志と想像力があってこそ、真の力を発揮するのです。
いま私たちは、「待つ人」から「つくる人」へ、「受け取る側」から「生み出す側」へと意識を転換する歴史的な扉の前にいます。課題の解決者として、つながりの創出者として、そして希望のデザイナーとして。一人ひとりが「つくり手」として歩み出すことで、社会はより温かく、持続可能な未来へと動き出すのです。